1)概要
 パーキンソン病は、中脳にある黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患です。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とします。このほか⑤同時に2つの動作をする能力(二重課題)の低下、⑥自由にリズムを作る能力の低下を加えると、ほとんどの運動症状を説明することができます。近年では運動症状のみならず、精神症状などの非運動症状も注目されています。発症年齢は50~65歳に多く、高齢になるほど発病率が増加します。40歳以下で発症するものは若年性パーキンソン病と呼ばれます。この中には遺伝子異常が明らかにされた症例も含まれえいます。
2)原因
 現段階では不明確ですが、いくつかの仮説が提唱されています。また、家族性パーキンソニズムの原因となる遺伝子異常が関与することや、環境因子が影響することも明らかとなっています。
3)症状
 運動症状として、初発症状は振戦が最も多く、次に動作の拙劣さが続きます。中には痛みで発症する症例もあり、五十肩だと思って治療していたが良くならず、そのうち振戦が出現して診断がつくこともまれではありません。しかし、姿勢反射障害やすくみ足で発症することは少ないですが、症状の左右差を呈することは多いです。 
 動作は全般的に遅く拙劣となり、椅子からの起立時やベッド上での体位変換時に症状が目立つことが多いです。表情は変化に乏しくなり(仮面様顔貌)、言葉は単調で低くなり、なにげない自然な動作が減少していきます。歩行は前傾前屈姿勢で、前後にも左右方向にも歩幅が狭く、歩行速度は遅くなります。進行例では、歩行時に足が地面に張り付いて離れなくなり、いわゆる『すくみ足』が見られます。特に方向転換するときや、狭い場所を通過するときに障害が目立つことが示されています。 
 パーキンソン病では上記の運動症状に加えて、意欲の低下、認知機能障害、幻視、幻覚、妄想などの多彩な非運動症状が認められています。 このほかにも睡眠障害(昼間の過眠、REM睡眠行動異常など)、自律神経障害(便秘、頻尿、発汗異常、起立性低血圧)、嗅覚の低下、痛みやしびれ、浮腫など様々な症状を伴うことが知られるようになり、パーキンソン病は単に錐体外路疾患ではなく、パーキンソン複合病態として認識すべきとの考えが提唱されています。  
引用文献:パーキンソン病(指定難病6) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp) 

 病勢の進行そのものを止める治療法は現在までのところ開発されていません。全ての治療は対症療法であり、症状の程度によって適切な薬物療法や手術療法を選択する必要があります。また、リハビリテーションを加えて行うことにより、症状の更なる改善やQOLの向上の期待ができるとされています。
1)薬物療法
 現在、大きく分けて8グループの治療薬が使われています。それぞれの治療薬に特徴があり、必要に応じて組み合わせて服薬します。パーキンソン病治療の基本薬はL-dopaとドパミンアゴニストです。早期にはどちらも有効とされていますが、L-dopaによる運動合併症が起こりやすい若年者は、ドパミンアゴニストで治療を開始すべきと言われています。一方、高齢者(一つの目安として70~75歳以上)、及び認知症を合併している患者は、ドパミンアゴニストによって幻覚・妄想が誘発されやすく、運動合併症の発現は若年者ほど多くないのでL-dopaで治療開始して良いとされています。症状の出現の程度、治療効果、副作用などに応じて薬剤の選択を考慮いていきます。
2)手術療法
 手術は定位脳手術によって行われます。定位脳手術とは頭蓋骨に固定したフレームと、脳深部の目評点の位置関係を三次元化して、外から見ることのできない脳深部の目標点に正確に到達する技術です。しかし、手術療法も症状を緩和する対症療法であって、病勢の進行そのものを止める治療法ではありません。しかし、服薬とは異なり持続的に治療効果を発現させることができることが示されています。 
3)リハビリテーション 
 リハビリテーションの特徴は患者本人が参加できる治療法であり、本人の意欲やモチベーションが影響しやすいということでもあります。そのため、患者の積極性を引き出すことにもつながり、患者やその家族を含む介護者の関心が高いです。パーキンソン病に対するリハビリテーションは下記に示すように、有効性のエビデンスも公表されており、他の治療法と組み合わせて行うことが不可欠であると言われています。 
参考文献:パーキンソン病(指定難病6) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp) 
パーキンソン病診療ガイドライン2018|日本神経学会治療ガイドライン|ガイドライン|日本神経学会 (neurology-jp.org) 

 リハビリテーションの一種である運動療法には、リラクゼーション、緩徐な体幹の捻転運動、緩徐な関節可動域訓練、ストレッチング、頸部と体幹部の捻転運動、背部の伸展と骨盤傾斜訓練、座位と姿勢制御、吸気と呼気相を意識した呼吸訓練、移動訓練 (緩徐な移動や、ベッドから椅子への移乗を含む)、反復運動を促進する自転車訓練、リズムをもったパターンでの歩行訓練、音刺激に合わせた歩行訓練、立位・バランス訓練、エアロビック訓練ホームエクササイズ、筋力訓練などがあります。 
  『パーキンソン病治療ガイドライン2011』では運動療法が、身体機能、健康関連QOL、筋力、バランス、歩行速度の改善に有効であることが示されており、エクササイズで少数ではあるが、患者の血清中の脳由来神経栄養因子 (brain-derived neurotrophic factor)が有意に上昇することも報告されており、動物実験と同様に患者でも神経保護作用の可能性が指摘されています。 
引用文献:パーキンソン病診療ガイドライン2018|日本神経学会治療ガイドライン|ガイドライン|日本神経学会 (neurology-jp.org) 

 当施設は、従来の一般的な運動療法に加え、徒手療法に特化したスタッフや近年数多くの有効なエビデンスが発表されている治療法を取り入れながら、単に機能的な訓練に留まらずに、実際の生活を見据えて改善へと導きます。 

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